城西バトルロワイヤル 

4 嘘







米地 茜(六十五番)はてくてくと歩いていた。
いつものように、帰路に着くように、戦場では無いかのように。
てくてくと歩いていた。
前方から女子が走ってくる。
「おぉー!!米さん!」
「おぉー佐々木やー」
佐々木 燃(五十二番)。 米地と大変仲の良いクラスメイト。

――会ってしまった
「会いたかったよ〜」
思い切り、ぐわしと佐々木に抱きつかれた。

――ムシズが走る・・

「私もよ」

――鳥肌が立つ

米地はゆっくり腕を解きながら微笑んだ。扱いは慣れている。
ここは雑草などが少なく、こざっぱりとした道。
「すこし、移動しようか?ここじゃ危ないよ?もえこ」
木がざわめいている。風が強いようだ。
「そだね〜、そういえばさ、向こうに町があったんだよー」
佐々木は振り返り、すこし反り目に人差し指をピンと伸ばした。
「人が集まるから逆に危ないよ、 こっちに行こう」
米地は佐々木の腕を取り、人差し指が向けた方向と真逆に歩く。

とりあえず目に付かない場所に移動して、適当に話を聞く

米地の行動に疑問を持たず、ガサガサと草を掻き分け2人は雑林へ進んでいった。
「もぉ〜大変だったよぉ?一木さんがいきなり殺されるしさぁ〜殺し合いとかさ〜」

――そして


「ねぇ、支給武器はなんだった?」
「んーとねー?」
ゴソゴソとバッグの中に手を突っ込んでまさぐる。
なにか、爪に固いものが当たった。
「ぉ、なんじゃこりゃあ」
ズルズルと、黒々と、バッグから引きずり出すように。
銃を取り出してきた。

――サブマシンガン

とても少女が持つには不釣合いで、不恰好で、100歩譲っても佐々木にはとても似合わなかった。
「ぅわあー こりゃあんたには向いてないわー 重いし 反動強いよ?」
「へー そうなんだー・・・で? なんでそんなコト知ってんの?」
貸してみ、と手を差し出し、そこへ佐々木のサブマシンガンが置かれた。
「あ、ああ メル友に銃が詳しい奴がいてよ そいつが教えてくれた・・・」
サブマシンガンは米地には良く似合い、さながら暗殺者の様な風貌だった。
「ふぅん? そうなんだぁー じゃあ コレ 米地さんに あげるヨ」
佐々木は米地を信頼し、自分を守る盾であり、剣でもある銃を米地になんの疑いも無く、そのまま預けた。

後は―――――

「ねぇねぇ 米さんの武器はなに?」
米地が自分のバッグに手を掛け、貰った剣を押し込もうとしていた。
「ほら、この通り杖さ」
ついでにチラっと自分の杖を見せ、バッグのヒモを縛った。
「ハズレ?」
「うん」

―――もうひと芝居
米地は後ろを振り返り、
「ん? 人の気配がした! 走るよ!」
嘘の勘を使い佐々木の手を引いて走らせた。
大体佐々木の息が切れる程度まで走らせた。 
佐々木を騙しながら、全力失踪で走らせた。
騙しながら。騙しながら。
リュックから杖を出し。 シャリンと音が鳴り。牙を剥いて。
「ねぇ、 もう大丈ぶa―!―――!?―」
服を突き破り滴る赤き雫。 ずぶずぶと、腹に沈んでいく鉄の刃。
そして、引き出される。
「な・・・んで・・・?」 
米地の顔を見つめながら、気が遠くなり力が抜ける。足が震える。
 米地の顔を見つめながら。
顔がぼやけてきて。
それでも手を伸ばす。
頬に触れ、何かに触れ。
首を掻っ切られ。
何も理解できず。

「ゴメンね」

謝罪の言葉を理解できず。
佐々木は絶命した。


米地は剣を血払いし、杖に擬態した鞘に収めた。 
そして米地は走り出した。
今度は戦場を走る兵士のように、何かを求めながら、
このゲームの
『鬼』
として。



五十二番 佐々木 燃 死亡

―――残り63人



次→